川の水に手を浸すとひんやりと冷たい感覚が伝わる。
屑桐の自転車で此処に来た。
中学のときから何度も彼の後ろに座っていたが、未だ
に慣れない。
隣にいた屑桐も川の水に手を浸す。

「キモチイイね。」
「ん。」
十分に冷えたので二人でタオルを使って手を拭う。
屑桐が牛尾の頬を両手で挟むようにして触れる。
「ひゃっ!冷たい!!」
「キモチイイだろう?」
「うん。」
うっとりと目を閉じると秋の風を感じた。
屑桐の手が離れ、グローブを手渡される。

「キャッチボール、するんだろ?」

きゅっとグローブを手に嵌めるといきなりボールが飛んで
くる。
「今のは反則でしょ〜?」
「お前がとろいからだ。」
フハハと笑っていたので隙を狙ってボールを投げる。
が、やっぱり屑桐には叶わないらしい。
いつ五光が出てくるかと冷や冷やしたが彼は普通の球し
か投げてこない。
本当は彼は優しいのだ。

くすくすと笑っていたらカーブが来たので慌てて取った。



「ストレートばかりが来るとは限らない。」



「え?」
手ではゆるいキャッチボールを繰り返す。
「神様って信じるか?」
「うん、勿論だよ。神様は僕等一人一人の心の中に居る。」
屑桐の目の色が少しずつ暗くなるが手は休めない。

「神様は毎日、野球のように」
「?」
「一人一人にボールを投げてくる。」
「・・・・?」
「お前は今まで苦労をしたことがあるか?」
「え・・・・・」
「多分、貴様は今まで全て直球で打ててきたと思う。」
「そう、なのかな?」
「俺も中学までは偶に甘いカーブとかが来るくらいで、
全てを打ってきた。」
「ぁ・・・・・。」
取り損なった球が後ろに転がっていく。
すぐに追いかける。

「お前が十二支に行くと言った時、初めて神様が打てない
球を投げてきた。」
屑桐はそのまま川原に座り込んで、グローブを外した。
牛尾も彼の隣に座る。

「俺には、打てなかった。」

思わず、彼の頭を撫でた。
いつもの彼とは違って、何だか弱弱しかったから。

「そのとき、僕はホームランを打ってたと思うの?」
「・・・・・・・」
「僕もね、きっと打てていなかったと思うんだ。」
「君と三年になって再開したときも打てなかったはずだよ。」
そのまま頭を撫で続ける。
そして言葉を続ける。
「君と、こうして一緒に居られるようになって、また神様は直球
しか投げなくなった。」

ふふっと笑顔を見せると屑桐も瞳を合わせた。

「今、こうしていられて良かった。」
「あぁ。」


黙って身体を預けた。
屑桐もそれを静かに受け止める。




“神に感謝します。今、君とこうしていられることを。”



これからもずっと神様は色々なボールを投げてくる。
打てない球が来ることもあるだろう。
でも、彼と、屑桐と一緒なら―――。

君が居る限りずっと。





【あとがき】

えー、屑牛!!?牛屑みたいになったんですけど
屑牛ですから!!!!

はい。某ハードカバー小説さ○らの一説です。
さく○は本当に感動します。
でも、兄ちゃんは最後打てないんですよ。
ギブアップ。
ただ、御門ちゃんたちには打って欲しかったんで
こんな終わり方にしてみました。










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