「今日、何時から部活だッけ?」
「何時も通り、5時から。」



終礼後、寝ぼけてぼさぼさの髪で問う獅子川。
目が死んでいる。
どうしたのだろうか。


部活前、他の部員がランニングに行く中、牛尾と獅子川
だけが部室に残っていた。
「今日は元気がないね。君らしくない。」
「・・・風邪ひいちまッた。」
ゴホゴホと痰の切れない咳をする獅子川。
本当に風邪なんだ。
「もう、今日は帰ったほうがいいよ。監督には僕から」
「帰らねぇ。」
「どうして?」
「お前の筋トレのパートナーがいなくなる。」
牛尾の筋トレの二人一組のパートナーはいつも獅子川だ。
でも
「今日は仕方ないじゃないか!僕は君の身体が心配だ。」
「嫌だ。帰らん。」
「判った。じゃあせめて後一時間だけ此処に居て。」
体力を消耗させたくない。
出来れば家で休んで欲しいのだが・・・。
獅子川は一度言い出すと考えを曲げない。

「・・・ああ。」


ぼーっとパイプ椅子に座って時間をすごす。
すると獅子川が口を開いた。

「可愛い子が家にいて、『ゆっくり休んで』とか『お腹す
いてない?』とか聞いてくれッたらなー。」
熱であまり動かない頭をフル回転させての妄想。
多分。
「妄想かい?」
「あぁ。」
嫌だなぁ。心がずきずきする。
僕のことを考えてくれればいいのに。


「でも前に一回だけ、そういうことがあッた。
オッレさ、前に学校行くのが面倒くさくて学校休んだとき
いきなり女の子から電話が掛かッてきて
『どうして学校休んだの?』
って。
だから、オッレ嘘ついて『風邪引いて死にそう』ッて
答えた。
そうしたら、その女の子、スーパーで買出しして、いっぱ
い荷物持ってオッレのアパートに来てさぁ。
でも、玄関のチャイムが鳴ったとき普通に
『誰ー?』
とか元気いッぱいに答えちまッた。
そんでその女の子は怒って帰っていった。」
「ふ〜ん。」
ニコニコと楽しそうな顔をして聞いてあげた。
心はずきずきしている。
何だか夏休みの宿題がたまってしまったときみたいな、
あのモヤモヤ。
逃げてしまいたいくらい嫌だった。

げほげほ、ぜぇぜぇ言いながら獅子川はまた口を開く。
「この手の話ならもう一つあッる。」
「へぇ〜、何だい?」
あぁ、もう聞きたくないよ。
嫌だよ、獅子川君。

「オッレってほぼ一人暮らしみたいなモンだろ?
だッから飯は殆ど自炊とかしねぇ。
コンビニとかファミレスとか・・・そんなんばッか。
一回女の子にその話をしたら、その女の子が
『じゃあ私が作りに行ってあげる』
って言ッた。
俺、つい『死ね』ッて言ッちゃッてよぉ・・・。」
ぜぇぜぇと荒い息をつきながら笑顔で話している。
もう、僕はどうすればいいかわからない。
でも出来るだけ、普通の会話をしなければ。
「君はその女の子が嫌いだったの?」
「いや、ものすごく好きだった。ただ・・・」
「ただ?」
「そんなことされたら、もッと好きになッちまうから。」
「――――。」
つらくて、つらくて。
きっと僕の想いなんて届かない。
そう、確信した。



君の輝く記憶は、僕の暗闇。



君なんか、好きにならなきゃ良かったのに。



【あとがき】
悲恋系っすか!!!?
好きにならなきゃ良かった!!!!なんて
言うなよー。
てゆーか獅子川くんの馬鹿―――!!!
そんな過去をお持ちになるなんて!
(↑お前が考えたんだろ!)
御門ちゃんが可哀想だ!!!

















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